DOI WATCH BLOG

腕時計と私の日常

2本目のラマ。

先日また時計を買ってしまった。いつものようにオークションやフリマアプリを漁っていると、偶然出会ってしまうものである。そして速攻でポチる。悪い癖だ。

 

それで購入したのはこちら。

RSW(ラマスイスウォッチ)のSUMO(スモウ)というモデル。2本目のラマだ。調べても有力な情報が出てこないほど知名度は低く、紹介されているページも通販サイトくらいで極めて少ない。

 

f:id:doiwatch:20200710215858j:image

 

この時代のラマといえば見た瞬間に分かってしまうほどの特徴的すぎるデザイン。それでいてモデルによってキャラクター性は大きく異なっている。先月購入した“サンデッキ”は角ばったケースで直線的な印象なのに対し、今回の“スモウ”はケース全体が丸みを帯びていて何気に多機能だったりする。

 

f:id:doiwatch:20200710230419j:image

 

今となっては激安で売り捌かれているのが現状だが、元値がちゃんと高いだけあってモノの質は確かなものだ。前面ポリッシュのケースや専用設計のブレスレットは非常に手が込んだつくりをしている。時・分・秒針に加えてデイ・デイトやパワーリザーブ、おまけに週カウンター表示が付いているおかげでデイリーユースにも向いた仕様だ。

 

中古で購入した汎用ムーブメント入りの時計は、基本的には一通り分解掃除とメンテナンスを行うと決めているので、今回もオーバーホールを行った。


f:id:doiwatch:20200710215851j:image

 

特殊機構の構造などの理解が深まる上、何よりオーバーホール代が浮くのが嬉しい。この時計はETA2892の上に付加機能のためのモジュールが載っているので、作業をしていて楽しかった。

 

f:id:doiwatch:20200710230835j:image

 

次に文字盤をプチカスタム。


f:id:doiwatch:20200710215855j:image

 

はじめにこの時計を見たときにどことなく寂しさを感じ、何か色を足せないかと思ったので、インデックスとリングの部分に青いウレタン顔料を塗布した。これで世界で1本だけのラマが完成。(なんてお手軽な..


f:id:doiwatch:20200710215847j:image

 

そして最後に原型を崩さない程度にケースをポリッシュして組み立て完了。

という事で、我が家の“夏時計”兼“ラグスポ”はコイツに決まりだ。ステンレス製のブレスレットが付いた重量感のある時計はラマ以外に持っていなかったが、この時計を何日か着けてみて悪くないな、と思った。非常に良い出会い方だったと思う。

 

さて、ラマは今後も増えるのだろうか?

 

【時計レビュー】リップ ノーティック・スキー

本ブログ恒例の時計レビュー。

今回は、モンディーンのstop2goに引き続きリップの新しい時計をお借りしてレビューさせていただくことになった。

 

レビューして調べていくうちに最も印象的なのは、リップの時計は“奥深い”という事だ。一見ファッションウォッチのような羽振りでありながら、なかなか愛好家心をくすぐってくるではないか。同社の現行コレクションを見るだけでも分かる通り、モデルの振り幅がとにかく広い。1度見たら忘れられないほどデザインが特徴的なアイコンウォッチから、ヴィンテージの風合いを遺した復刻版など、長い歴史の中で培った技術力と個性が垣間見えるモデルばかりだ。

 

さて、今回ご紹介させていただくのは、複数存在する復刻版のひとつである「ノーティック・スキー」。

2018年に登場した本作。お借りしたのは下の写真の2本だが、コレクションは4色展開だ。しかし、ただ色が異なるだけではなく、そもそも文字盤や針などのデザインが異なるため、全く違う時計と言ってしまってもいいほどだ。

 

f:id:doiwatch:20200709202907j:image

 

復刻版という事は、それに付随した偉大な歴史がある。

ノーティック・スキーは、1967年にフランス国内で開発された初の200m防水性能を備えた機械式時計だったのだ。

ノーティックはフランス語で防水の意。そしてスキーは文字通り雪山を滑り降りる、あのスキーである。フレッド・リップ氏の娘にあたる人物がスキーチームの一員で、スキーの軽快な滑りとスピードに対する情熱を込めたのだそう。

あからさまにダイバーズウォッチなのだが、陸上のスポーツから取った名称をつけたというストーリーも面白い。

彼が「厳しいスポーツ時の環境下でも着用出来る防水時計をつくりたい」という想いで誕生し、1968年にフランスのグルノーブルという街で開催された冬季オリンピックに合わせて販売したらしい。その性能が故、多くのスポーツ選手や探検家が愛用していたという話も聞く。

 

f:id:doiwatch:20200709202843j:image

 

では本体をじっくり観察していこう。

200m防水を確立したダイバーズウォッチとしては非常にこじんまりとした外観だ。


f:id:doiwatch:20200709202836j:image

 

私のダイバーズウォッチのイメージは比較的大きいものが多い印象だが、ケースの直径は38mmで、オリジナルより2mm大きいもののヴィンテージらしい雰囲気は醸し出している。

肉厚のドーム風防は現代らしくサファイアクリスタル製で、オリジナルに増して耐衝撃性が向上したのは喜ばしい事だ。


f:id:doiwatch:20200709202847j:image

 

文字盤の質感は非常に好印象で、ラインナップによってデザインが異なる。オリジナルの雰囲気を再現したマットなブラックも素晴らしいが、私が特に気に入ったのが、鮮やかな青色が目を惹く“トリコロールカラー”だ。高級機さながら、光の強さや見る角度によって異なる表情を楽しめる。青色が好きな私にとっては“刺さる”ものがあった。


f:id:doiwatch:20200709202904j:image

 

ダイバーズウォッチといえば太い回転ベゼルがデザインのアイコンになっているが、ノーティック・スキーでは数少ないインナーベゼルを採用している。

ケース側面には2つのリューズがついており、2時位置のリューズで文字盤の周りにあるインナーベゼルを操作することができる。視認性は確かなもので、実用にも役立ってくれる筈だ。


f:id:doiwatch:20200709202832j:image

 

一方で4時位置のリューズはねじ込み式で、こちらでは時刻合わせを行う。高い防水性を誇る上でねじ込み式は信頼できる要素である。

ただし、ここで言いたいことがひとつ。ケースの直径が38mmに対し、厚みが14mmオーバーというは少々厚すぎやしないだろうか。この時計を手に取った瞬間に抱いた違和感はこれだ。


f:id:doiwatch:20200709202850j:image

 

その要因は裏スケであるが故にすぐに分かる。ムーブメントはミヨタの82系ベースを搭載しているので、機械分の厚みは致し方なしか。裏蓋をソリッドバックにして少しでも厚みを抑え、メカを見せない方が時計全体の雰囲気、使い心地共に向上するのではないか、と我ながら身勝手な提案をしてしまった。


f:id:doiwatch:20200709202855j:image

 

また、ストラップはウレタンとレザーの2種類が付属しているので、季節や用途によって雰囲気を変えられるのは嬉しい。


f:id:doiwatch:20200709202859j:image

 

特にウレタンベルトはつくりが細かく、表面はファブリック素材のような細かな模様とステッチが再現されている。また、全体に穴が開いているお陰で発汗性も兼ねている。時計本体と共にベルトも水分は気になるところだが、ダイバーズウォッチに相応しい素材がお供なら安心だ。

 

f:id:doiwatch:20200709224520j:image

 

最後にリストショット。

38mm径のケースサイズは、私のような腕が細い人にもよく合うのだが、前述したように裏蓋が厚い影響で、どうしても重心位置が高くなってしまっているのを腕上で感じた。それさえ気にならなければ、快適に使える実用時計としての機能は十分だろう。

しかも、このヴィンテージならでは雰囲気が漂うフランスメイドの時計はそう多くはない。リップらしいお洒落なデザインと日常使いに富んだ仕様で、普段の生活でも大いに役立ってくれるシーンも多いはず。

これからの汗ばむ季節に、1本の個性派ダイバーが腕元を飾る夏を、一度体験してみてはいかがだろうか。

 

【詳細】

リップ ノーティック・スキー

品番:

ブルー:LP671503、ブラック:LP671505

ケース:ステンレススチール、直径38mm、サファイアクリスタル風防

文字盤:ブラック/ブルー 夜光付き

ムーブメント :ミヨタ製 自動巻き

ストラップ:ウレタン/レザー 幅18mm

その他:200m防水、インナーベゼル

価格:74,000円+税

 

モデルの詳細はこちらから

https://lipwatch.jp/collections/nautic-ski

 

また詳しい情報は、リップ公式オンラインストア( https://lipwatch.jp/ )をご覧ください。

 

【自作腕時計】新作のご紹介と製作工程。

久しぶりの自作時計のご紹介。

既に完成してから1ヶ月以上経過してしまったが、改めて本記事でより詳しく紹介していきたい。

 

f:id:doiwatch:20200701083746j:image

 

こちらが自作した時計。

 

私は、我ながら好きな時計の振り幅は広い方だと思っている。所有している時計でも言えることだが、1900年代にスイスで製作された懐中時計の機械や刻音を聴いては癒され、ごく最近のトレンドでもあるスマートウォッチもよく着用して散歩に出掛けている。

また時計のデザインや機能もそうで、極々シンプルな3針時計からクロノグラフトゥールビヨン等の複雑機構まで見ていて飽きないと感じている。

私が欲しいと思う時計、または作りたいと考える時計に共通しているのは“その時計にしかない魅力があるか”ということだ。そのブランドにしか創り出せない発想やギミック、その時計師だからこそのデザインや雰囲気など...。

決して他の真似事ではない唯一無二の個性を放つ時計を迎い入れ、また創作していきたいと日々思って過ごしている。

 

f:id:doiwatch:20200701083946j:image

 

今回製作したのは3針時計で、これは自分の理想をできるだけ形にすることに重きを置いたものだ。

仕様だけを見れば極めてスタンダード。ムーブメントの中心に時・分針、6時位置にスモールセコンドがある、所謂ユニタス配置。この配置が好きでよく自作時計を製作する際にお世話になっているが、この“制約”がある状況下でいかに理想形を生み出せるかが難題であり目標でもあるのだ。

 

f:id:doiwatch:20200703101527j:image

 

製作において最も時間を要したのはデザインかもしれない。自身の脳内でおおよその形を思い浮かべ、それをスケッチとして現実のものにしていく作業。

そのデザインを考えていく上で、些細だがいくつかの決まった仕様を設けた。例えば「青焼きを必ず取り入れること」や「小秒針はできるだけ大きくしたい」「アラビア数字でも個性を出せないか」「表側からもムーブメントが見えるようにする」などなど...細かな設定があるのだ。それをバランスよくひとつの時計として完成させるのが肝になる。


f:id:doiwatch:20200703101530j:image

 

文字盤だけではなくムーブメントの装飾も施した。現時点では機械をゼロから製作することはできないため、完成された機械を購入して自分なりに手を加える。ケースも同様だ。


f:id:doiwatch:20200701083820j:image

 

そして無事に完成した時の高揚感は今でも忘れられない。約1ヶ月前に思い浮かべた“妄想上”の時計が“実体”となり腕に巻かれていることは、この上ない喜びなのである。

 

 

続いては実際の製作の流れを軽く紹介していきたい。

 

まずはスケッチ。前述したような条件を満たす最適解を探し求めていく。

最終的には寸法や仕上げなどを詳細を決めて図面を描く。


f:id:doiwatch:20200701083709j:image

 

次に全ての部品を金属板に図面通りに罫書いて切り出す。


f:id:doiwatch:20200701083812j:image

 

切り出したそれぞれの部品の形を整え、寸法を微調整して適した仕上げを施す。

 

文字盤外周リングには青焼きを行う。この部品が良いカラーアクセントになる。


f:id:doiwatch:20200701083724j:image

 

分リング。

それぞれのドットは窪みをつくり、そこにインクを流し込んむことで立体感を生む。


f:id:doiwatch:20200701083804j:image

 

時リング。

アラビア数字をビュランで掘る。この数字は時計全体の雰囲気と合うようにするため、丸みを帯びたフォントを考えた。面取りも相まって高級感もある。


f:id:doiwatch:20200701083733j:image

 

ネームプレート。

私のフルネームを掘った。背景(人差し指の指紋)からも見てとれるようにとても小さい。


f:id:doiwatch:20200701083713j:image

 

秒リング。分リング同様にドットを掘ってインクを流し込む。


f:id:doiwatch:20200701083743j:image

 

時・分・秒針。

これらも鉄板から切り出すのだが、立体感を引き立たせるためにエッジを落として丸みを帯びるように成形していく。そして鏡面に磨いて青焼きするとこうなる。


f:id:doiwatch:20200701083826j:image

 

続いてはムーブメント。

地板と輪列受けの表面にはサンドブラスト加工を施し、ガッツリ深い面取りを行う。


f:id:doiwatch:20200701083739j:image

 

テンプ受けにはエングレービングを施した。ランダムな方向に模様を掘ることで光の角度や明るさによって様々な表情を見せるようにした。


f:id:doiwatch:20200701083753j:image

 

このムーブメントに使われている全てのネジには青焼きを行った。

受けを留めるネジは紫色、角穴車とコハゼを留めるネジは明るい青色にした。


f:id:doiwatch:20200701083749j:image

 

ここでようやく全ての部品が出揃ったので、組み立てて調整をすれば...


f:id:doiwatch:20200701083809j:image

 

完成‼︎


f:id:doiwatch:20200701083718j:image

 

構想から完成までの期間は約1ヶ月。自粛期間中に自宅に篭って製作に打ち込んでいた。

 

自作時計に終わりは無いと思っている。常に新しい時計を創り出したいという想いがあるからこそ、切磋琢磨していくのは必然的である。

早速ではあるが、次に製作する時計のアイデアが浮かんでいるので、現在デザインや素材を検討中。

近いうちに製作に取り掛かるので、随時SNSにアップしていく予定だ。

【時計購入レビュー】THE ELECTRICIANZ ・THE STONE Z

本ブログ恒例の時計購入レビュー。

 

3月頃だっただろうか。

この時計の存在を知ったきっかけは、原宿の銘店、LSD東京で実機を拝見したことだった。今まで見たことのない、時計として斬新な発想とデザインに魅了されたのを覚えている。

それからSNSで詳しく調べていたら、ちょうどその日の夕方にイイ感じの新作が発表されているではないか。何というタイミングだ!すぐさまLSDの店長さんに問い合わせ、入荷次第連絡をいただけけるようお願いした。

 

...それから待つこと約3ヶ月。ついにその日が来た。送られてきた実機写真を見ると、思った以上にカッコいい。これはいくしかないと、購入を即決した。

 

俗に言う「LSDをキメてきた」のである。

 

さて、今回ご紹介するTHE ELECTRICIANZ (ジ エレクトリシャンズ)は、スイス人のデザイナーであるローレン・ルーフェナハト氏によって設立された新進気鋭の時計ブランドだ。

 

f:id:doiwatch:20200628151841j:image

 

ブランド名であるエレクトリシャンズは、電気工事士や電気技師を意味するらしく、それが時計に表れているのが分かる。

今回購入した“THE STONE Z”は、大柄のステンレスケースに鮮やかなブルーのオフセンターダイヤルが目を惹く新作だ。


f:id:doiwatch:20200628151904j:image

 

時に斬新すぎるデザインは、チープな印象を与えてしまう事も否めないが、この時計は心配無用。

文字盤とその周りの部品のディティールは見事。各所に“電気”を感じさせる立体感のある造形である。


f:id:doiwatch:20200628151908j:image

 

一層目を惹くのは、9時位置に埋め込まれているボタン電池と、そこから伸びている配線。他の時計では見られない部品だから斬新で面白い。


f:id:doiwatch:20200628151859j:image

 

この時計の更に面白いのは、2時位置のプッシュボタンを押すと文字盤のインデックスが光り、下部からボタン電池を照らすというギミックを秘めていることだ。

よくある目覚まし時計のように文字盤全体を照らすのではなく、文字盤の下に配されたクリアパーツを光らせる。

昼と夜とでは異なる未来的でカッコいい魅せ方が上手い。


f:id:doiwatch:20200628151837j:image

 

文字盤だけではなくケースの造形にもこだわりが。一見ただのラウンドケースに見えるが、リューズとプッシュボタンのある右サイドは少し膨らんでいる。

マイナスネジのようなリューズや、プッシュボタンの青いリングが良いアクセントになっている。


f:id:doiwatch:20200628151852j:image

 

ケースバックはこんな感じ。

時計のスペックや使用する電池の情報までもがバランスよく記されている。

文字はレーザー加工だと思うが、彫りが深く消える心配はないだろう。


f:id:doiwatch:20200628151848j:image

 

カーフレザーのベルトとバックルは純正。グレーとさりげない青いステッチは、時計本体と非常に相性がいい。


f:id:doiwatch:20200628151834j:image

 

リストショット。

ケースは直径45mmと大柄だが、文字盤が小さいおかげかその大きさを感じさせない。

やはり面白い時計は、腕元を見るたびに楽しめるのが1番の魅力だと思う。

 

最後にエレクトリシャンズのボックス。

時計だけではなく箱まで“電気”を感じさせるのはさすがだ。


f:id:doiwatch:20200628151856j:image

 

乾電池を模した筒状の箱。中に時計が1本入るシンプルな構造。

写真のようにマニュアルのページにアクセルできるQRコードを載せているところも新しい。


f:id:doiwatch:20200628151831j:image

 

【詳細】

THE ELECTRICIANZ 

・THE STONE Z

ケース:ステンレススチール、45mm

ムーブメント:ELZインハウスエレクトリックモジュール 

風防:反射防止ハードミネラルK1ガラス

防水:3気圧防水

ストラップ:22mm幅、カーフスキンレザー

 

【時計購入レビュー】RSW サンデッキ

前回の時計レビューから少し期間が空いたが、Stay Homeが呼びかけられていた悲劇の3ヶ月から脱し、少しずつではあるが世間が日常を取り戻しつつある昨今...。

 

約5年という決して長くはない期間を時計趣味に捧げてきたわけだが、常日頃から新しい情報を得ながら多くの時計を見て、実際に購入して着けていくうちに、私自身の好みも少しずつ変化していくように思える。

比較的安価な国産の使いやすいエントリーから始まり、アンティークや舶来のシンプル系など、数十本の時計を買っては売ってきた。

 

そして、現在私が行き着いたのは、普通とはちょっと違う個性派時計なのだ。

 

f:id:doiwatch:20200621200321j:image

 

さて、今回購入した時計も個性派に他ならない。

RSW(スイスラマウォッチ)は1998年に設立されたスイスの時計ブランド。

このマイナーなブランドを知ったきっかけは、とあるネット記事で“ナスカ”というモデルのレビュー記事を読んだ事だった。その特徴的すぎるデザインが記憶に根強く残っていたのだろう、時々思い出しては中古市場を漁っていた。


f:id:doiwatch:20200621183243j:image

 

それで偶然発見したのがこのモデル。

名をサンデッキというらしい。一瞬見ただけでも目に焼き付くほどの一風変わった外観だ。


f:id:doiwatch:20200621183229j:image

 

縦49mm、横35mmという大柄なケースは、何とも形容し難い形状をしている。

正方形の文字盤はケース下部に位置しており、太めのインデックスと針であるため視認性はとても良い。さりげなくスモールセコンドがついているのは自分的にポイントが高い。


f:id:doiwatch:20200621183212j:image

 

そしてこの時計の最大の特徴が、12時位置にある△マークの部分。ここはプッシュボタンになっており、ここを強めに押すとケース上部が勢い良く開口し、そこからリューズが現れるのだ。

こんな独創的な仕組みをケースに盛り込むとは、さすがラマさん。


f:id:doiwatch:20200621183236j:image

 

ケース側面は淵のシルエットに沿って凹んでいる。無反射コーティングが施されたサファイアガラスの風防も、ここの形状に合わせて湾曲している。

ここだけ見ると航空機の翼の断面のような形をしていて面白い。

外装にこだわったブランドだけあって、ケースの仕上がりは高級機さながらだ。ヘアラインとポリッシュの面が上手く使い分けられている。

加工とフィニッシュの大変さが真摯に伺える。


f:id:doiwatch:20200621183222j:image

 

最後にリストショット。

見ての通りとても大きいが、ケースバックの曲面が腕にフィットするため付け心地はむしろ良いと感じた。


f:id:doiwatch:20200621183215j:image

 

ステンレスベルトの仕上げも抜かりない。バックルには堂々とRSWのロゴが。


f:id:doiwatch:20200621183219j:image

 

 

突然お迎えしてしまったこの時計。

次第に気温が上がり腕の露出が増えるこの季節。その特徴的すぎるデザインは、私の腕の上で個性を放ってくれるだろう。

 

【詳細】

スイスラマウォッチ サンデッキ

品番:9410

ムーブメント:ETA製クォーツ

機能:時・分・秒の表示

ケース:ステンレススチール製、縦49mm、横35mm

防水性:5気圧防水

価格:不明

生産終了品

【時計レビュー】モンディーン stop2go

【モンディーン】といえば、時計にある程度興味のある人なら一度は聞いたことがあるブランド名だろう。

私はモンディーンの時計を所有した事はないが、もちろん以前からその存在は知っていて、いかにも“スイスらしい”シンプルかつ特徴的な覚えやすいデザインであるため、強く脳裏に焼き付いていたのだった。

とは言っても私自身の知識は乏しく、正直「スイス国鉄の鉄道駅に設置されている時計でしょ」という事くらいの認識しかなかったので、今回お借りしたモデル“stop2go"をきっかけに、モンディーンの奥深い世界を知ることができた。

 

f:id:doiwatch:20200603140424j:image

 

まずはモンディーンの歴史から。

1951年に創業した当時は時計を輸入販売する会社で、フランク&ベルンハイムという名前だったが、1954年にモンディーンに改名。

それからスイス鉄道時計のデザインを使用できる権利を得て、1886年に現クラシックコレクションのオリジナルである「スイス国鉄オフィシャル鉄道ウォッチ」を発表した。

 

f:id:doiwatch:20200603140429j:image

 

今回ご紹介する時計“stop2go"の誕生も歴史と深く関わっている。

1944年、スイス人のエンジニアであるハンス・フィルフィカー氏は、スイス国鉄のための新しい時計を開発した。それは、電話線を用いることで各駅の時計の時刻を同期できるというものだったらしい。

約3000箇所に設置してある全ての時計を同期・調整を行うタイミングは60秒に1回。

秒針は58秒で1回転し、12時位置で2秒間停止することで、時計の不具合や進み・遅れが生じてしまった場合も再調整できるため、全ての時計を一斉に動かすことができた。

この機能は“stop  to go”と呼称され、現在でもスイスでは一般的らしい。

 

f:id:doiwatch:20200603153147j:image

 

そんな唯一無二の機能を腕時計に組み込むべく、開発がスタートしたのは2008年。4年もの歳月をかけて2012年に現実のものとなった。

当然、この動きを実現させるのは機械式ではなく集積回路とモーターを用いたクォーツ式だ。

3つの針全てを1つの輪列で簡潔に動かす通常のクォーツ時計と違い、秒針を12時位置で2秒間停止させる必要があるため、時・分針と秒針を分けて2つのモーターで別々に駆動させている。

秒針の動きが1秒間に4回のステップ運針をするので、とてもロービートな機械式に見えないこともない。


f:id:doiwatch:20200603140420j:image

 

そんな特殊なムーブメントは、デザイナーのマーティン・ドレクセル氏がデザインした外装に包まれる。

他のモデルとは少し雰囲気が異なり、ケース側面の突起部分と直線的なラグが一体化したようなデザインで、普通とは違うという静かなアピールが見て取れる。

 

f:id:doiwatch:20200603173216j:image

 

ケースの面全てがサテン仕上げであるため、どこか工業的とも言えるだろう。

モンディーンの時計は全て同じに見えるほど似ていると感じるが、僅かな違いを見つけるのも面白い。


f:id:doiwatch:20200603140436j:image

 

オーディオアンプのボリュームのような形のリューズは他に見たことがない。

特殊機構が故に、この時計の時刻調整もちょっと特殊。

リューズを引くと秒針が12時位置に回帰し、回転させずに左右に傾けると時・分針を動かしておおよそ20秒単位で時刻調整ができる。

万が一秒針の位置がずれてしまっても、リューズを長押しするなどしてニュートラル位置を修正することも可能だ。


f:id:doiwatch:20200603140432j:image

 

今回お借りした時計はブラックとレッドの2種類。それぞれレザーの質感も異なる。

硬派なブラックに対し、レッドは非常に柔らかい。


f:id:doiwatch:20200603140417j:image

 

リストショット。

モンディーンの時計は総じて着け心地が軽いというのを聞いたことがあるが、それは間違っていないようだ。直径41mmであるにも関わらず、全くその大きさを感じさせないのが不思議なくらい。

白文字盤に黒く太い針とインデックス、先端が丸い赤秒針がもたらす視認性は抜群そのもの。普段使いの時計として愛用するユーザーが多い事にも合点がいく。

 

f:id:doiwatch:20200603140414j:image

 

ベルトの色に合わせてシャツの色も変えてみた。

ブラックにはホワイトのシャツでビジネススタイルにもマッチしそう。


f:id:doiwatch:20200603140440j:image

 

レッドにはライトブルーの明るい色のシャツで休日のカジュアルに。


f:id:doiwatch:20200603140443j:image

 

最後にこの時計に隠された秘密をひとつだけ。

視認性に優れた文字盤の弱点は暗所に対応できなかったということ。

しかし2017年に発表されたモデルは、このように針の裏にスーパーミノルバを塗布することで、夜でも安心。

少しミステリアスにも見える光を放つ針はモンディーンだけだ。

 

【まとめ】

一見カジュアルでシンプルな3針時計の皮を被った面白い時計、モンディーンのstop2go。

抜群の視認性を保証し、秒針が2秒間停止する唯一無二の動きを毎分楽しめるのが最大の魅力だ。

いつかスイスを訪れた際に、チューリッヒ駅中央口にあるモンディーンのステーションクロックの動きを生で見てみたいと思った次第である。

 

 

【詳細】

モンディーン stop2go 2017 

商品番号:MST4101BLC

原産国:スイス

防水性:3気圧防水

ケース:ステンレススチール 直径41mm 厚さ11.5mm サファイアガラス風防

ストラップ:本革ストラップ 幅20mm

重量:68g

価格:84,000円+税

 

詳しい情報・お問い合わせ:モンディーンオンラインストア https://www.mondainewatch.jp/sp/

 

【時計レビュー】リップ ラリー シルバー&ブルー

※今回の記事は前回の続編です。前回アップした

【時計レビュー】リップ マッハ2000

の記事をご覧になっていない方は是非ご参照ください。

 

さて、今回ご紹介させていただくのはこちら。

 

f:id:doiwatch:20200516210350j:image

 

リップのラリーというモデルで、文字盤のデザインが異なる“シルバー”と“ブルー”の2種類がラインナップされている。

この時計は昨年(2019年7月)に発売されたのだが、実はオリジナルが存在する復刻モデルなのだ。

 

f:id:doiwatch:20200516210346j:image

 

1950年代に製作されたこのモデル。

名前が示すとおり、当時、車の運転やレースの際にドライバー着用する計器として活躍したという。

前回にも紹介したが、リップ創業者のエマニュエル・イザーク・リップマン氏の孫にあたるフレッド・リップ氏がデザインを手掛けている。彼の愛車だったフェラーリの410・スーパーアメリカのダッシュボードからインスピレーションを得たそうだ。

とても車が好きだったというフレッド氏。リップの時計師達に愛車のフェラーリを改造させていたこともあったという。

 

ホディンキーの記事を拝見して知ったのだが、この時計(ブルーの方)は一部のファンからは“ポール・ニューマンクロノグラフ ”と呼ばれているそう。

その理由は、2つのサブダイヤルの目盛りのデザインに正方形のドットを採用しているという事から。ココだけ見比べると“細かいけどなるほど”と気が付いた。

 

ホディンキーの記事はこちらから参照していただきたい。https://www.hodinkee.jp/articles/a-detailed-investigation-of-the-mysterious-lip-paul-newman-chronograph


f:id:doiwatch:20200516210354j:image

 

まずはブルーから見ていこう。

ある程度の知識がある人なら、パッと見ただけでこの時計のフォルムから“ヴィンテージ感”が伝わってくるだろう。とうのも、外装の殆どが当時の質感を忠実に再現しているからだ。

文字盤に配されたブルーは、どこかレトロさを感じさせる。この色を言葉で表すのは難しいが、絵具で例えるなら“コバルトブルーにホワイトを少し混ぜ、わずかに燻ませた”ような色...というと分からなくなってくるので写真で伝われ...!

 

ブルーのリングの内側は光沢感のあるシルバーなのに対し、タキメーターを表示する外側の部分はホワイトのラッカー仕上げ。僅かなコントラストも芸が細かい。

 

f:id:doiwatch:20200516210357j:image

 

一方のシルバー。同じコレクションだが文字盤は全く異なる。

半光沢のシルバーをベースにグレーのインデックスや、3時から9時位置にかけて橋渡し(?)するようなデザインでプリントされている。

プリントのみのブルーに対し、シルバーではバーインデックスや“12”のアラビア数字が植字であるが故に立体感がある印象。

針に隠れて見えづらいが、中心にはチェッカーフラッグもプリントされているほか、赤い数字は視認性を向上させている。

針の塗り分けも非常に細かいと言える。

 

この時計の機能は、時・分表示に加えてクロノグラフと24時間計、デイトを備える。


f:id:doiwatch:20200516210343j:image

 

そのクロノグラフを動かすプッシュボタンだが、ここだけが少し残念なところ。

この時計のムーブメントはミヨタ製のクォーツを搭載している。何よりクォーツならではのプッシュ感が、ヴィンテージな外観のラリーとはあまりにもミスマッチに感じてしまうのだ。

秒針をスタートさせる際のクリック感はまだ良し。一旦ストップさせ再スタートさせる際に、機械式と違って電極が接触するだけなのでクリック感すらないのである。

マイナスな印象を抱いてしまった機械面だが、良くも悪くも価格相応だ。

 

ミネラルガラス製のドーム風防は綺麗。オリジナルのプラ風防のフォルムは健在。


f:id:doiwatch:20200516210338j:image

 

ケースバックにはリップウォッチの紋章である鷲が。この時計のケースは前面ポリッシュだが、ベゼルやラグが細いので過剰に光って主張するということはない。


f:id:doiwatch:20200516210405j:image

 

バックルにもリップのロゴ。ベルトは純正品。


f:id:doiwatch:20200516210408j:image

 

リストショット。ケースの直径が38mmなので、腕が細い私にとっては見事なまでにちょうどいいサイズだ。

日本人に馴染みが良く、男女問わずフィットしてくれるだろう。

 

最後に嬉しいポイントを紹介しておこう。


f:id:doiwatch:20200516210402j:image

 

時計単体ではなく、オンラインストアで販売されている“ストラップセット”はナイロン製のNATOベルトが付属している。

バネ棒外しさえあれば手軽に着脱でき、カジュアルな印象に大変貌。

その日の気分やファッションに合わせて楽しめるのも魅力。

リップが時計好きにもファッショニスタにも愛させる所以のひとつだ。

休日に鮮やかなベルトと合わせて出かけると、思わず気分が上がるのではないだろうか。


f:id:doiwatch:20200516210331j:image

 

(私はNATOベルトを持っていなかったので、これをきっかけに興味を持った)

 

【詳細】

リップ ラリー

ブルー:LP 671800

シルバー:LP 671801

 

ケース:ステンレススチール製 直径38mm 厚さ13mm 5気圧防水

ムーブメント :ミヨタ製クォーツ

機能:クロノグラフ 24時間計 デイト

ベルト:レザー&ナイロン

価格:32000円(税抜)

お問い合わせ:LIP公式オンラインストア 

https://www.lipwatch.jp/sp/ からアクセス!