【自作腕時計】新作のご紹介と製作工程。
久しぶりの自作時計のご紹介。
既に完成してから1ヶ月以上経過してしまったが、改めて本記事でより詳しく紹介していきたい。
こちらが自作した時計。
私は、我ながら好きな時計の振り幅は広い方だと思っている。所有している時計でも言えることだが、1900年代にスイスで製作された懐中時計の機械や刻音を聴いては癒され、ごく最近のトレンドでもあるスマートウォッチもよく着用して散歩に出掛けている。
また時計のデザインや機能もそうで、極々シンプルな3針時計からクロノグラフやトゥールビヨン等の複雑機構まで見ていて飽きないと感じている。
私が欲しいと思う時計、または作りたいと考える時計に共通しているのは“その時計にしかない魅力があるか”ということだ。そのブランドにしか創り出せない発想やギミック、その時計師だからこそのデザインや雰囲気など...。
決して他の真似事ではない唯一無二の個性を放つ時計を迎い入れ、また創作していきたいと日々思って過ごしている。
今回製作したのは3針時計で、これは自分の理想をできるだけ形にすることに重きを置いたものだ。
仕様だけを見れば極めてスタンダード。ムーブメントの中心に時・分針、6時位置にスモールセコンドがある、所謂ユニタス配置。この配置が好きでよく自作時計を製作する際にお世話になっているが、この“制約”がある状況下でいかに理想形を生み出せるかが難題であり目標でもあるのだ。
製作において最も時間を要したのはデザインかもしれない。自身の脳内でおおよその形を思い浮かべ、それをスケッチとして現実のものにしていく作業。
そのデザインを考えていく上で、些細だがいくつかの決まった仕様を設けた。例えば「青焼きを必ず取り入れること」や「小秒針はできるだけ大きくしたい」「アラビア数字でも個性を出せないか」「表側からもムーブメントが見えるようにする」などなど...細かな設定があるのだ。それをバランスよくひとつの時計として完成させるのが肝になる。
文字盤だけではなくムーブメントの装飾も施した。現時点では機械をゼロから製作することはできないため、完成された機械を購入して自分なりに手を加える。ケースも同様だ。
そして無事に完成した時の高揚感は今でも忘れられない。約1ヶ月前に思い浮かべた“妄想上”の時計が“実体”となり腕に巻かれていることは、この上ない喜びなのである。
続いては実際の製作の流れを軽く紹介していきたい。
まずはスケッチ。前述したような条件を満たす最適解を探し求めていく。
最終的には寸法や仕上げなどを詳細を決めて図面を描く。
次に全ての部品を金属板に図面通りに罫書いて切り出す。
切り出したそれぞれの部品の形を整え、寸法を微調整して適した仕上げを施す。
文字盤外周リングには青焼きを行う。この部品が良いカラーアクセントになる。
分リング。
それぞれのドットは窪みをつくり、そこにインクを流し込んむことで立体感を生む。
時リング。
アラビア数字をビュランで掘る。この数字は時計全体の雰囲気と合うようにするため、丸みを帯びたフォントを考えた。面取りも相まって高級感もある。
ネームプレート。
私のフルネームを掘った。背景(人差し指の指紋)からも見てとれるようにとても小さい。
秒リング。分リング同様にドットを掘ってインクを流し込む。
時・分・秒針。
これらも鉄板から切り出すのだが、立体感を引き立たせるためにエッジを落として丸みを帯びるように成形していく。そして鏡面に磨いて青焼きするとこうなる。
続いてはムーブメント。
地板と輪列受けの表面にはサンドブラスト加工を施し、ガッツリ深い面取りを行う。
テンプ受けにはエングレービングを施した。ランダムな方向に模様を掘ることで光の角度や明るさによって様々な表情を見せるようにした。
このムーブメントに使われている全てのネジには青焼きを行った。
受けを留めるネジは紫色、角穴車とコハゼを留めるネジは明るい青色にした。
ここでようやく全ての部品が出揃ったので、組み立てて調整をすれば...
完成‼︎
構想から完成までの期間は約1ヶ月。自粛期間中に自宅に篭って製作に打ち込んでいた。
自作時計に終わりは無いと思っている。常に新しい時計を創り出したいという想いがあるからこそ、切磋琢磨していくのは必然的である。
早速ではあるが、次に製作する時計のアイデアが浮かんでいるので、現在デザインや素材を検討中。
近いうちに製作に取り掛かるので、随時SNSにアップしていく予定だ。